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近藤夫妻の1999年5月山行記録

<毛勝三山> 猫又山2378M/釜谷山2415M/毛勝山2414M(北アルプス北端) 1999.5/22−24

百名山中最も難関な山毛勝山  

 うとうやってきた。毛勝山はあの天下の岩峰剱岳のすぐ北にあって、登山道が無く、三百名山中最も難関な山の一つであるという。  下の小屋から日帰り可能と聞いていたが、インタ−ネットで見た情報からはとても急峻な雪渓で、落石等多くとても危険そう。標高差1200M程(白馬雪渓で600M)急な所は平均傾斜30度以上が800M続く雪渓なんて、実際怖くて私はとても下れそうにない!! 
 そこで一番緩い傾斜の
南又谷をつめて、往復することにした。とはいえ、上部はやはり急になるだろう。不安を胸に出発した。
 

南又谷をつめて稜線に立つ

林道は釜谷出合い近くまで来ており、沢山の車が止まっている。山菜採りにも来ているようだ。カタクリや可愛らしい花達が林床に咲き乱れ、ゼンマイ他いろんな新芽が出ている。山菜の知識があればここは、その宝庫であるのが解かるのだが、知識がないので指をくわえて見ているだけだ、残念。
釜谷の出合い付近は、真ん中の雪渓が一部破け、その下を恐ろしくも狂喜した大量の雪解け水が流れていく。見上げると、上まで谷は白くえんえんと続き、両側からの落石や木片が散らばっている。長居は無用と言うことか。けれどもそんなに早くは歩けない。
 「先に歩いている人がいる」と夫が言うのだが、黒い岩のようで見ててもちっとも動かないから、私にはさっぱり分からない。後から来ている人も、ちっとも動かない。
 猫又谷分岐ぐらいで休んでじっと見ていると、やっと彼らの動きが分かってきた。すると谷の上部で、止まっていた木か岩と思っていた黒い塊も4つ動き出したのだ。何をしていたのかな。私達もそんなふうに見えるのかな。
 白と緑の両側の尾根に、
ダケカンバの幹が映え輝いて美しい。深く味わう余裕はなく、道はどんどん急になってくる。雪は適当に腐っているので、ノ−アイゼンでトレ−スを辿るのだが、私には歩幅が広すぎて息が上がる。やっと傾斜が緩くなると、とうとう稜線に辿り着いたのだ!

猫又山は剱の大展望台

猫又山からの大展望。近藤浩平自己紹介のページの写真を参照(ここをクリック)
猫又山から朝の剣岳(ここをクリック)

 ああこんなに近く、迫力のある剱岳を見たことがあるだろうか。輝く雪を身にまとい、谷底から峨峨峨とそびえ立つ!馬場島から頂上迄、白く長い早月尾根の全貌も望める。東に、懐かしく天駆ける心地で縦走した後立山の、白く眩しい山波が並ぶ。春の真昼の光なのでくっきり見えないのが惜しいところだが、夕朝が楽しみだ。
 足元あちこちにスキ−がデポしてある。のんびりしていると持ち主が現れ、一瞬後に滑り落ちて行った。急なので谷底は望めないが、滑っていく姿はカッコイイねぇ。
 
猫又山へは思ったより急で、トラバ−ス個所もあるのでアイゼンを付けて登っていく。谷奥底にすっと落ちているので、慎重に行きたい。地元で人気の山らしく、何人かすれ違っていく。こんなに展望豪華で、豪快な山登り(下り)を楽しめる所はちょっと、ないだろう。
 
猫又山頂上の雪面にテントを張った。大は真ん前!
奥大日大日、その奥に立山薬師鍬崎山黒部の谷底からそそり立つ白い後立山連峰、爺ガ岳秀麗な鹿島の槍、五竜、唐松、不帰ノ嶮、白馬の大山瑰、雪倉、朝日と並ぶのだ。そして宿願の毛勝山が、釜谷と共にあの欅平へ真っ直ぐ落ちてゆく谷の向うに、大きく鎮座している。ブラボ−!!
 しかし時々、
の方からズッドッ−ンと轟音が響く。雪崩がそこかしこで起っているのだ。
 後から来ていた兄ちゃんは、テントを張らず雪洞を掘り出した。1、2時間掛けて造ったそれは快適そうだったが、如何に…?
 3人で
富山湾に沈む夕日を眺めた。登ってきた長い猫又谷の雪渓も、先の小さな平野に人住む街も、日が暮れて、真っ赤に燃えた太陽はこけしの様に伸びて、日本海に落ちてゆく。白き山々も一瞬夕焼け色に薄く染まる。
 今回は、登頂だけが目的だったので、望遠レンズを置いてきたことが悔やまれるが、何故か、山頂に置かれた三脚があったので使わせてもらった。以前、夕日の写真コンク−ルで入賞した時の賞品の七面鳥は、美味しかったな。又食べたいな等と、不埒な思いよぎりつつの撮影になる。
 夜は軽量化し、ツナコ-ン入りマッシュポテト、豚キムチ他入り汁ソバと、抹茶ミルク他ドリンク。

宿願、毛勝山に登る

毛勝山頂からの展望(ここをクリック

 白馬岳からのご来光に手を合わせて決戦の朝は始まった。軽荷で毛勝山を目指す。朝はアイゼンがよく利いて歩きやすい。張出した雪庇で広い尾根に見えるが、日毎に雪は崩れ、幾筋もの縦皺を作り、時には真ん中をトンネルにして水に帰っていく。その色々な造形美が、朝陽のもとに輝いて私達の眼を捉えるのだ。
 急に見えた最高峰
釜谷山は登っていくと大したことなく、からやってくるパ−ティとすれ違う。を奥に雪稜を登る人々の影はたまらなく絵になる。上で泊まっていたのか、数グル−プと出会った。白と黒毛の可愛い雷鳥ペアにも会った。何処を撮っても素晴らしくご機嫌の縦走路だ。
 あの恐ろしい
阿部木谷の上、先端に立ってみても下は覗けなかった。毛勝山迄ずっと快適な雪上歩きだが、三山とも標識のある頂周辺だけは、雪がない。
 その
毛勝山頂には数人かいた。谷から登ってきた人達だ。山スキ−ヤ−もいる。実は人気の場所なのだ。山頂からその谷斜面の一部が見下ろせる。じ−っと見ているとず−っと引っ切りなしに人が登ってくる。
 「こんなに人がおったら私でも登れるわ」、と思いきや支尾根の雪庇が、ゆっくりと大轟音をたてて谷へ崩落していった。ああっ−!幸いにも小さくて途中で止まった様だ。びっくりした!!やっぱり危険な谷だ。
 ここからは
白馬が、東にでかく真正面に見え、北に魅力的な駒ヶ岳僧ヶ岳へと、尾根が続いている。いつか、来ることもあるだろう。長く眺望と昼寝と、登頂しに来る人間(20〜30人位)模様を楽しんでいたが、ガスってきたので猫又に引き上げた。明日の天気は、雷鳥を見てしまったし、下り坂なので、残念だけど連泊せずに山を降りることにした。さらば、毛勝山、後立山、剱岳よ。

下山の楽しみ

 雪にもだいぶ慣れた私だが、猫又谷の急な下りは手に汗握りつつ、緩む傾斜の頃、余裕ができた。4時間掛けた登りも、1時間ほどで雪面を下った。スキ−だったら一瞬、物足りないだろうな。
 心なしか、来たときよりも斜面に土砂が崩れ落ち、雪もだいぶ溶けたようだ。登頂の喜びと、今年の雪山はこれで終わる安堵で嬉しい。本当は雪山好きじゃないのだ、夏山ばんざい。
 さて林道周辺は、砂防ダム建設中で騒がしそうなので、出来るだけ離れて野営する。翌日は、タクシ−待ちの時間がありすぎるので小雨の中、快い新緑の林道を下った。
 小錫を円錐型に沢山付けた仏教楽器?の様な、大きな花がいっぱいの
トチノキが目立つ。その実の餅は夫の好物なのだ。屋久杉を思わせる立派なほら杉の群落もある。タニウツギの薄紅の花は鮮やかだ。今回も良き山旅だった。
 今迄登った二百名山難関の中の笈ガ岳、佐武流よりは体力的には楽だった。しかし思い返せば、頂上で会った日除けの仮面を被った人達や、白いクリ−ム塗った不気味なおじさん達のように、我が夫にも塗ってやればよかったと、皮が剥けて汚い顔しておしゃれな会社に行く夫を見ては、反省する妻である…。
 おっと、
金太郎温泉は大きくてレトロ?な温泉、富山の「鱒の寿司」美味、も紹介しておこう。

<行程>大阪ー急行きたぐに
5/22魚津=タクシ-→南又谷林道終点(800)…→釜谷出合…猫又谷分岐右俣…稜線…(1400)猫又山<野営>
5/23(700)…釜谷山…阿部木谷上…(940)毛勝山(1200)…釜谷山…猫又山(テント撤収・1520)…(1700)林道<野営>
5/24(1000)…→=タクシ-→金太郎温泉=タクシ-→魚津駅富山ー 特急サンダ-バ-ド→大阪