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近藤夫妻の1999年4月山行記録

野伏ガ岳(越前美濃国境、白山と能郷白山の両白山地)1674M 
1999年4/3−4

長良川鉄道から石徹白へ
 長良川鉄道の旅である。川については、私の敬愛する野田知佑氏(他の人でも構わないが)の著書をお読みいただきたい。彼の本は日本の川に対する限りない愛情と、怒りと悲しみに満ちて心を揺さぶるのだ。彼の愛した長良川に深い憧憬を描いていた私である。
 今の川は当時の面影が残る程度なのだろう,、にしても美しい。深く青い水の流れに勢いがあり、白波が映える。川の中に腰まで浸かった釣り師が並び、数台のカヌ−が流れていく。鉄道は川に沿って、春爛漫の緑の野地をゆき、今よ盛りに咲く桜の大絢爛、山の斜面に咲く桜は遠目にも、殊に風情あり、農作業に勤しむ人々、手を振ると、はにかみながら振り返してくれる可愛いい子供達。北へ向かう程、白い山々が覗き、桜の咲きも遅くなり、この移ろう季節感がたまらなく好い。
 登山口の石徹白(いとしろ)は昔の白山登山の基地であり、正一位の位を持つ由緒正しき質素な白山中居神社がある。各地の神社には、信仰に守られた森、御神木が残されており大好きなのだが、ここにも素晴らしく立派な杉木立が並び(国の天然記念物の大杉もある)感嘆する。また小さな湿原があり、雪解けの中から、座禅草があちこちで花を咲かせている!から、いきなり大撮影大会となってしまった。

和田山牧場からの野伏ヶ岳 写真を見る(ここをクリック))

和田山牧場跡からダイレクト尾根を登る
 ここから、和田山牧場地跡までは残雪の林道を2時間も行けばよい。途中、下ってくる人の多さに新鮮ささえ感じる。道のない残雪の山シリ−ズで、かつてこれ程の人に会ったことがあろうか。
 樹林帯を抜けると、突然広い台地が広がり、目的の野伏ガ岳他360度山に囲まれた別天地だ。特にすごいのは、白山別山である。眼前にいきなり、そして白く優美にそびえ立つのだ。ちょうど良く雪の無い所があり、枯れ草もありその上にテントを張った。
 翌朝快晴、雪質すこぶる良く、よく締まり、それでいて蹴りが入るので、ワカンもアイゼンも要らず、歩きやすい。私達他に5張位のテントが点在し、石徹白からの日帰り登山者も多く、山スキ−ヤ−山ボ−ダ−(!?)、とても賑やかだ。
 味も素っけもない名前の「ダイレクト尾根」をダイレクトに登っていくと、和田山の雪の原にうねうね蛇行して流れる沢が、朝陽に輝いて見下ろせる。歩2時間程、労せずして得るには腹立たしい程展望の良い山頂だ。
 北にまず白山!〜別山三ノ峰銚子ガ岳の稜線が素晴らしく、大日岳との間には、鋭く尖る槍ガ岳、広大な北アルプスの山瑰が、乗鞍御嶽と浮かぶ。能郷白山奥美濃の山々、奥に伊吹山鈴鹿の北部、近くには百名山の荒島岳、この野伏の尾根を挟んで真向かいに噴火口(反対側で見えないけど)が見事な名峰経ガ岳、なだらかな三角の両裾を広げる赤兎山、他〜続く白山に戻ってくる迄時間に行数のかかること!斯くして人が集まる訳だ。

野伏ヶ岳からの白山と白山別山 写真を見る(ここをクリック)

ダイレクトに下山
 長く頂上で楽しんだ後、尾根を下るに20分。テントへ戻り撤収して明るい春の元の道をルンルン下った。
以前白山を挟んで北の大笠山(1882M・ここから笈ガ岳往復、間にある千丈平は和田山と少し似ている)に登った時はひどく疲れ果てたのに…。苦労と報酬の比例の無さに私の頭は「?」で一杯だ。
 更に、雪解けて流れゆくこの沢はあの名川長良川に注ぐものと感慨深く思っていたのに、実は九頭竜湖に注ぎ日本海へと北上していくのだから驚きだ。例えば同じ山を源流としていても右に転ぶか左になるか太平洋日本海かと別れる事もあるのだから、まこと水の運命も数奇なものである…。

<行程>大阪⇒JR→岐阜⇒美濃太田⇒長良川鉄道→美濃白鳥=タクシー→石徹白(14:20)…→(1610)和田山牧場跡<野営泊>(6:40)…野伏ガ岳…和田山…(1300)石徹白=タクシー相乗り→美濃白鳥⇒ 以下略  宝塚

 ところで最近書き出すと止まらなくなって長くなって恐縮ですが、ぜひお話ししたいで加えさせていただく。冬のテント生活について。対策はずばり寒さについてだ。
 最近オールシーズン、ゴアエスパ−スのテントを使っている。外張りのない分寒いが軽くてかさばらない。私はこれしか知らないが、夫いわく、結露しない(寒いときはするが、滴が落ちてこない)らしい。
 また全てのテントの弱点は底にある。地面から冷気が直接上がり、底は温もりにくい。そこで、極力地面とは間をあけたい。雪のすぐ上は避けたい。この季節使えるものは杉の枯れ枝葉、それを集め敷きつめる。効用は前回(東山ほか)の通りである。中の一番下にビニ−ルシ−ト(テントの外、下に敷くのも良いが濡れてしまって2泊目が困る)、レスキュ−シ−ト、銀マット、ウレタンフォ−ムマットを置く。
 寝袋が濡れるのが一番最悪だ。必ずゴアのカバ−を付け、一度くちゃくちゃにして広げた(空気の層ができる)新聞紙を寝袋との間に挟む。内との温度差で結露した水滴を吸ってくれるのだ。先に、最近出ているナイロン製のペチャンコになる水筒(冷凍もできる)に熱湯を半分くらい入れて完全防水しタオルで巻いて入れておくと寝袋が温まるし、寝る時は足元が非常に助かる。朝は生温かい水のまま、朝食作りに便利だ。カメラの電池は抜いてポケットに入れ一緒に寝る。カメラ、水等も一緒か近くかに置いて凍結を防ぎたい。
 使い捨てカイロは腰に貼るのが一番全身に効く。毛糸の帽子、マフラ−も要だ。以上がだいたいの私達の寒さ対策であるが他に良い方法があれば教えてください。
 さて水は、雪を溶かす場合、明るいうちにきれいな雪を集めたい。ビニ−ル袋に詰めてテントの端っこに置いておくと便利だ。溶かした水は料理には使えても、明るい所では飲みたくない(汚いのが判る)。煮沸して粉ジュ−スを混ぜて飲用する。
 山の楽しみは食にもある。山やとして主婦として栄養のバランスやカロリ−、味、値段、かさ、重さ等こだわりたいが、紙面が尽きてしまったので、またの機会に譲る。とりあえず今回の夜のメニュ−は、きのこのクリ-ムソ-スペンネのパスタ、鰻入りキンピラごぼうサラダ、パンプキンポタ-ジュス-プ、抹茶水羊羹と餅入りおしるこのデザ-ト、コ-ヒ-、ココアなのだ。