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近藤夫妻の1999年10月山行記録

谷川岳 1977m <上越>  199910/9−11

旅の始まり、平標山の家へ  

 乗り込んだ夜行急行「きたぐに」は、鮨詰め状態で、座る隙間もなく、立ったままの登山者達は、翌朝無事、山に登れたのでしょうか。旅慣れた私達は、順番をホ−ムに確保して食事に行き、飲んで帰ってきたら長蛇の列。むろん席に座って、熟睡できた。降りた湯沢では、バス待ちの時間に温泉朝風呂に入ってさっぱりと、平標山に向かう。
 幹線道路のバス停からおよそ2時間で、平標山の家に着く。あっけなく小屋にたどり着くと、秋田犬とチャウチャウ犬の血を引く変な犬がいたり、多くの登山者で賑わっていた。
 なだらかな
平標山と堂々たる仙ノ倉山が秋空にそびえる。谷は急峻で、斜面をビロ−ドのような美しい笹が覆い、所々にダケカンバの白幹や、茶紅葉した小灌木(ツツジなど)がアクセントをつける。風が笹原を撫でると、波のように従順に葉を反して流れ、上等の布地の様な光沢が輝くのだ。その感触を楽しむように風は戯れそよぐ。紅葉がしゃきっとしてたら、その素晴らしさはなお良かったろうに、でも充分堪能 し、明日の縦走に期待が膨らむ。
 早めに宿泊手続きしたので、良い寝場所を確保して、夕食まで爆睡。夕方はガスで真っ白。昔懐かしカレ−ライスの食後、再び爆睡。山に来ると、日頃の寝不足が解消できていいわ。満員だったけど、南に、
三国峠に向かう人が多い様だ。他にもバリエ−ションに富んだコ−スが楽しめる。

緑なす笹原の縦走路

 夜明け前に
平標山に登り着くと眼下に、一面の雲海からそそり立つ名山達。まず苗場、佐武流、白砂の山塊、岩菅、本白根、四阿、浅間山、八ツ南ア秩父連山の間から見違えなき富士山、手前に榛名、忽然と赤城山がそびえ、武尊の後ろに皇海、日光白根、燧など、巻機山の肩から覗く越後三山と、まあ何と数々登った山たちよ。
 連峰最高峰の
仙ノ倉山(以下仙さん)の頂から太陽が上るのを見て、向かう。一時間弱で登頂。朝陽を受けて、上記の山々他に北ア白馬岳等も加わり、更に展望広がる。
 下ると、
エビス大黒ノ頭がめっちゃ格好良い!両絶壁を空に突き上げ、強烈な朝光を浴びて、ぎらぎら光る笹斜面と影側との陰影を分け、下から沸くガスと後の縦走路鞍部を渡る滝雲の白がコントラストを強調する。すごいわ。また途中にある避難小屋もすごい。錆びたドラムカンやん…。
 
エビス大黒を越して万太郎山(以下万ちゃん)に向かう。振り返ると大黒さん、それを従えた仙さんが雄大だ。そして秀麗な笹斜面、何度も何度も何度も、シャッタ−を押してしまう。すれ違う人が「こんなのずっと続いてますよ」と言うのだが、カメラを離せないのだ。
 万ちゃん周辺は笹と茶褐色の湿原が入り混じって色彩が深い。赤谷川本谷を挟み、目的の谷川岳も見えてきた。山頂も展望良くGood。秋晴れで遠く富士山もまだくっきり見えて、連峰の朝日岳一帯の山塊が近くなってきた。何処を見ても好い。ずっと見飽きない。
 下るとまた、
万ちゃんが恰好良いのだ。北面の壁が切れ落ちて岩峰連なり、南側も急峻な笹斜面が輝いて、私は万ちゃん一番気に入ったな。夫は仙さんらしい。
 そして
赤谷川源頭部一帯がまた素晴らしい。沢筋を集めて谷は曲がりくねって遠く流れていき、風渡る大笹原をいく。大障子の小屋は縦走中ましな避難小屋で、水場も近いだけに混み合う危険も多くて行き過ぎる。
 小障子
辺りからは断然、俎グラ山稜がカッコいい。全体が鏡のようにきらめくのだ。本当にず−と笹原美しく、でもアルプス並の急山稜は迫力があり、視界を遮る物はないので大パノラマが広がり、山間が近いので苦労感じなく頂々に立て、入山交通便利、こんな縦走路はちょっとないよね。人気なのが良く分かる。
 
オジカ沢ノ頭からは谷川岳の賑わいが手に取れる。肩の小屋が混むと嫌なので、今日はここ泊まり。ここは大ドラム缶で核シェルタ−?のよう。床が平らでないのが欠点だが、静かな夜を楽しめた。
 
魔の山、谷川岳へ
さあ、
谷川本峰だ!中ゴ−尾根との分岐辺りで夜が明けた。大きな小屋はやはり人が多い。山頂はすぐ。展望もちろん良く、夫が言うには30余りの百名山が望める。
 山容は
仙さん万ちゃんの方が威厳を感じるが、あの谷川の名を不動普遍にする多数の遭難死亡事故を出した一ノ倉沢側が、やはり凄い、異様ですらある。断崖絶壁で切れ落ちて、前回ガスで見えなかった谷底は、急な分近いが、真っ直ぐ落ちず、岩峰群が天突上げて降りていく。今までの急な稜線もなだらかに感じる程だ。
 谷を挟んで立つ
朝日岳ら山塊と清水峠、蓬峠で結ばれ馬蹄型縦走ができ、これも人気のいつか行きたい路だ。トマの耳、オキノ耳、一ノ倉岳の間は岩群を進む。岩は人やアイゼンで削られてツンツル滑りやすい。谷川岳岩も土も(木道も)滑りやすいのだ
 振りむくと、岩稜と紅葉樹に光り輝く
オキノ耳が、すこぶる恰好好い!!一ノ倉山頂は展望少ない。ここの小屋もドカン。
 下ると笹原開けて良い。
万太郎谷側は湿原を少し張り出してから落ち、丁度谷川岳を折り返して今迄歩いてきた稜線を横目に見ながら進む。茂倉山頂は蓬峠への分岐となる。今日も富士山が見え、馬蹄型の山塊、巻機山が正面、他最後の大展望に思いを馳せる。
 今回見直したのが
赤城山だ。登って面白みない山だったが、谷川岳の背景に良い位置で独立してそびえるので、名山にふさわしい風格がある。
 そして期待以上の、とても楽しい縦走だった。名残り惜しみつつ、
茂倉新道を下る。振返って見上げると、青空に向かってまっすぐ伸びる道、あの素晴らしい天国への階段のようだった。
 樹林帯に入っても
万ちゃん が覗く。やがて、この連峰をぶち抜いた関越道からの騒音と、土樽周辺の殺風景が、何処もかしこも美しく、感動止まない山旅の蛇足となって、残念だ。

<行程>10/8 大阪-
JR急行きたぐに→/9長岡湯沢=バス→登山口…→平標山ノ家<泊>
10/10…
→平標山…仙ノ倉山…万太郎山…オジカ沢ノ頭小屋<泊>
10/11…
谷川岳…一ノ倉沢岳…茂倉岳…土樽-JR湯沢-北越急行金沢大阪