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近藤夫妻の1999年3月山行記録

由良ガ岳(丹後)640M(西峰)    
1999.3/28

金久昌業氏の教え
 世の中には特定の地域だけを好んで登り、主(ヌシ)となる人がよくいる。京都北山を熱烈に愛し、詳細なガイドを残した金久昌業氏の昭和48年発行の「京都北部の山々」は、いささか時代がかった仰々しさがあって笑えるが、真摯になって、素直に読めばこれほど深く味わいのある山本は近頃ない。
 例えば
「…略…私達が感動を覚えるのは、…。所を得て伸び伸びと成長する樹木の生命力に接して、人には人格があるように木にも木格を感ずる時である。…。空行く雲に宇宙を感じ、自然の摂理に人間を感ずるときである。山はいい。趣味でもなければ、スポ−ツでもない。ましてやレジャ−というものにはほど遠い。生そのものであるからだ。」「なぜ普遍を追求しないのか。日本の山々はそれに応えてくれる充分な美と深さをもっている。…。青い海と緑の山、この限りなく美しい国土に生まれた私たちは、その風土に接しられる喜びと誇りを持たねばならぬ。その最も典型的なのが北山である。その原点といい直してもいいかもしれない。」ぜひ、声に出して読んで大笑いされることをお勧めする。そして反省したい。自然を愛してこその私達だ。しかしながら、ここ30年位で激変した日本の風景は、これほどの熱を持って語られる価値は無くなったのかもしれない。
 また氏いわく、
「由良川といえば、その水上の由良川源流が思い浮かぶ。あの原生林の山域は、…、限りなき郷愁であり帰一される原形であり中核である。その流れが蜿蜒と流下して海に注ぐところに、由良ガ岳はある。原初と終着である。この意味からもこの山に登る意義は大きい。」
 長くなって申し訳ありません。すごいボキャブラリーでしょ!?

「舞鶴湾一望」の東峰と「天橋立一望」の西
 さて、氏お勧めのこの山は、単なる裏山といった風情の山であるが、これが懐かしく優しい。かつて過酷で偉大なヒマラヤからうなされながら帰ってきた時、裏山の甲山はどんなに優しく私を迎えてくれたことだろう。
 由良が岳日本海近いので降雪も多いだろう。雪の重みで倒れた木々、それに耐え新芽を出す枝たち。春は、破壊と再生の森だ
 山の上部の植林を抜けると、「舞鶴湾一望」東峰「天橋立一望」西峰に道は分かれる。東峰を登り始めると眼下に、由良川の河口と白砂の海岸線の向こう、大海が広がっている。期待を胸に登り立った時、京都北山の山波深く続き、舞鶴湾の複雑な入江に感嘆したその時だ。にわかに暗雲たちこめ、風が吹き雪も舞い始めたのだ!アンビリィバブゥ〜。
 一番初めに目に飛び込んできた双耳峰の秀麗な青葉山がみるみる雲に隠れ、南西の大江山も消えてゆく。海は波立ち、冷たい冬の日本海だ。頂上での儀式(ずらずらと見える山々の名前を唱える)をする夫を待ち、早々に西峰に向かう。時すでに遅し。天橋立など形もなくただ白い世界が荒れた頂上にあるばかり。
 そこへ宮津の方から、眺めの良いらしい新しい登山道を作ってきたおじさん達が現れた。新しい道ができるのも有り難いが、こうして登山道を整備し守ってくれる地元の方々のお陰で山登りができる。各地の山で出会ってきたが、心底感謝しつつ、「また来てや。」「はい!」の返事を裏切るばかりで心苦しい。いつかきっと…たぶん…。
 尚、
由良浜「安寿と厨子王」伝説の地で、温泉地だが日帰り入浴できる所はない。

<行程>宝塚ーJR→福知山西舞鶴ー北近畿タンゴ鉄道→丹後由良(9:40)… 由良ヶ岳東峰…→西峰…→(1340)由良浜…由良川河口…丹後由良駅四所…ふじつ温泉入浴…四所西舞鶴JR→福知山宝塚