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野村誠氏の音楽を聴いて〜即興音楽の再演

2004年8月1日MU楽団も出演した碧水ホールでの野村誠氏のコンサートを聴いた。
遠くまで聴きに行った甲斐があった。
この日、この時、こういう人達がこういう場所に集まったからこういう音楽になったという音楽の生まれ方に「演奏」というものを楽譜の再現という作業的緊張から解放する面白さを感じる一方、巧みなシュチエーションのコントロールで生まれる作曲者の強靱な個性も印象づけられた。
MU楽団による自閉症者の即興音楽(2002/04改訂版)改訂版の演奏(クラリネット 福前裕子  ヴァイオリン 阪中美幸  チェロ 多井智紀 ピアノ 植田浩徳  打楽器 永澤学演奏)は、音が美しかったが、3月5日甲東ホールでの初演時の演奏より、やや予定調和的なおとなしさを感じた。
飲みにいって盛り上がったメンバーを、もう1回召集して、もう1回同じように盛り上がろうとした時のような気分。
野村氏の音楽でおそらく重要な要素である、この場所に今日、居合わせた人達という「一期一会性」からすると、同一メンバーで同一作品を再演をしたとき、音楽の1回性という野村氏の音楽の魅力の重要な要素を新鮮に保ちにくい面があるのかもしれない。
個々の演奏者にとって野村氏の作品が再演しにくいという意味ではなく、再演するならメンバーの入れかわりがあった方が、お互いに反応の意外性があって音楽への驚きが保ちやすいのではないかという気がする。
野村氏の音楽は、何度も手がけるなら、固定メンバーで何度も再現するより、一度演奏を経験した各人が、それぞれいろいろな場でいろいろな人を引き込みながら広げていくということに、より実りがある音楽なのではないか。
2004年9月23日

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