コダーイ・ゾルターン。ハンガリーでは姓・名の順。
数多くの名作、合唱音楽、音楽教育
「ハンガリー詩編」「マロシュセーク舞曲」「ガランタ舞曲」「ハーリ・ヤーノシュ」「孔雀による変奏曲」など素晴らしい作品が数多くあり、数多くの合唱音楽は世界中で愛唱されている。音楽教育の業績も大きい。
バルトークのように20世紀音楽史の展開の中で、重要な革新的作品として語られることは稀だが、民謡を素材にしつつ変化に富んだ深みのある響きで彩られたコダーイの音楽は、多くの人に直接コミュニケートする力をもっている。
「作曲」と「編曲」の価値
民俗音楽を分解・分析し、抽象化して、新たな作曲技法の体系をつくりあげるという方向にコダーイは進まなかったため、技法・様式の革新を重視した20世紀音楽史の記述においてバルトークのように論じられる機会は少ない。
コダーイの音楽作品は多分に民謡素材をストレートに使用していて、バルトークの「作曲」に比べると、「編曲的」な要素が多いということはあるが、それは音楽の価値を低めるものではない。
民謡・伝統を直接的に素材に持ちこんで良い音楽作品を作ることを、オリジナリティがない、独自の個人様式に完成していないという否定的なとらえかたをする見方もあるが、これは「ロマン的」な芸術観だ。
コダーイは、ちょうどヴォーン=ウィリアムスが「イギリス民謡組曲」を書いたり、パーシー・グレインジャーが民謡編作曲(=セッティング)をしたように、ロマン的個人主義とは異なった態度で作曲した人のように思う。
つつましく普遍的な民衆の音楽
バルトークのように、ストラヴィンスキーやシェーンベルクのように改革者として世界に認められようという野望とエネルギーがみなぎっているというタイプの作曲家ではない。
私はコダーイとバルトークという2人の組み合わせに、ちょっと、ヴォーン=ウィリアムスとホルストという2人の組み合わせを連想する。
バルトークの音楽の凄まじいまでの密度と完成度とインパクト、国際主義と比較すると、
コダーイの音楽は、つつましく普遍的な民衆の音楽だ。
2000年10月9日
近藤浩平記
コダーイについてのお薦めサイト
Musica
コダーイについての充実したサイトがあり、コダーイの生涯、作品、ディスコグラフィなどについて日本語で読む事ができます。
マジャールの音/コダーイひろば
ハンガリーの作曲家コダーイはマジャールの音に根ざしつつ合唱音楽や音楽教育の大きな業績で、20世紀の日常音楽生活に大きな影響を残した。このサイトからは、コダーイのバックグラウンドまで深い情報へ入っていくことができる。