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近藤夫妻の1999年11月山行記録

大普賢岳1780m <大峰山系> 199911/13−14 

地味なれど、小粋な和佐又山とヒュッテ  

 ハイキングの会ユートピアで冬に以前、和佐又山に登り、その時からなんとなく、気になっていたのだ。和佐又から、大普賢岳を周遊する。急峻な大岩壁を行く、スリルあふれる縦走と思っていた。
 まず初日は和佐又ヒュッテへ。大和上市からバスは吉野川に沿って走る。海を挟んで四国にも同名の吉野川が流れているのがおもしろいと、夫はしきりに感心している。秋晴れの見事な青空の下、谷からの白い大岩壁を色鮮やかな木々が取り巻いて、今年一番の紅葉に胸が高鳴る。が、またしても、ダム建設の為に、こんなにも由緒ある吉野川が延々と削られ、村落が沈み行く工事が進行中である。大台ケ原へと続くこの道が拡張されるべきなのは理解できるが、何故、こんなにも、こんなにも……。
 和佐又口のバス停で、前回降りしきる雪をしのいだ祠が懐かしく、車道に沿って行く道の木々の鮮やかな紅葉が嬉しい。少しして、谷筋の道へ入る。ああ、これよ!今年初めての枯葉じゃない、色彩ある落ち葉を踏みしめ歩く、これが秋の山よ。ただ、そんな事だけど、本当に嬉しい。
 木漏れ日も明るく、和佐又谷のせせらぎも清潔で気持ち良い。のんびりと楽しみ味わいながら、ヒュッテに到着。車多く、貸切バスもある。みんな秋を楽しみたいのね。でも泊り客はそれほど多くなく、キャンプをする人が半分くらいかな。大きな綺麗な小屋だ。 寝場所を確保して、とりあえず和佐又山を往復してくる。
 さすが西が誇れる一番の山域よ、森が格別に良い。言いかえれば、関西らしくない、どこか関東、秩父山域と似た雰囲気のすっきりした、落ち着いた森が広がる。特に大普賢岳の周辺の樹林は絶品であった。
 和佐又の山頂は地味だけど、高原的な優しさがある。明日行く大小普賢がこんもりとそびえ、行者還岳の厳しい山容もこぢんまりと、大峰主峰の弥山の山稜もなだらかに連なる。東に谷を挟むと山頂までの林道がくっきり見える大台ケ原が正面にある。
 小屋に戻って、お風呂に入り夕食だ。れがまたあなた、キノコ尽くしの美味しい温かいご飯よ。まず、しめじと栗の炊き込み御飯、なめこのおろしあえ、ひらたけの和え物、ふなたけの和え物、ごま豆腐と、しいたけ他お野菜の沢山入った鴨鍋が取り放題で、どんなに幸せだったか!春にはきっと、山菜尽くしのご飯だろうな、また来たいわぁ・・・。  

大峰奥駈け縦走路  

 朝ご飯を食べて出発。道は急だが手入れよく、梯子等がつけられ、危なかしい所などない。絶壁の連なる笙ノ窟他の名の窟が並ぶ。納得は鷲ノ窟、正に肉食禽のくちばしがごとく、岩が突き出すのだ。このあたり、手強そうだと思っていたのに、岩を巻いて、整備された道をぐんぐん登って行くので、えっ?もう登頂!、約2時間。天気は良いのに、山頂部だけがガスに覆われて、残念ながら展望はない。
 何組かのパーティが行ったり来たり休んだり…夫の「大峰は河内のおっさん達の山」と言う通り、聞こえてくる話し声が河内弁、関西弁ばかりなのも、あいこち旅し過ぎの私にはちょっと新鮮だ。関西人の自覚を忘れてるな。けれども、ここは意外に若者も多く、女の子達も混じって、頑張っている。私達もちょっと休んで下った。
 ちょっと下るとガスから抜け出て、紅葉した谷間に日が差し、大峰らしい渋い景観が広がる。
また上記の通り、森が素晴らしいのだ。木々に生命を感じる。大峰奥駈の修業は、自然の力、気に通じたい、取り込みたいとする人の欲望、人という自然に調和しない種の羨望であり、人の宿命といえるかもしれない。そうして生きる力や喜びを呼び起こし、取り戻すのだ。それは辛いものなんかでなく、結構楽しかったのじゃないかな(お腹が空くのは辛いけど)。宗教心は別として、登山にも同じ事が言えると思う。
 役の行者修験場の由緒ある大峰の道々には、やはり不思議な霊気があって、厳粛な気持ちになる。重苦しいイメージだが、森は生き生きとして爽やかなのだ。道標に「←吉野、熊野→」とあるのもおもしろい。
 どんどん良くなって、縦走が続く。稜線は石楠花が多く、花の頃は絶佳だろうが、このしゃくなげの藪こぎ(押しても引いても身動きが取れない)をして以来、好きになれない…。またその姿を、花頭から「シャクナゲ星人」と私は呼んでしまうのだ。綺麗な花だけどね。
 展望もよく、大普賢の大岩壁と、懐かしい稲村ヶ岳を横目に感嘆しつつ、早く下っても仕方ないので休み休み、弥勒岳、国見岳、七曜岳と登り下り、結構時間がかかってしまった。谷に下りて、無双を探勝する。石灰岩の岩窟で地下水が轟々と流れ出し、上部の穴は水平に延々と続いて入っていけるのだが、ヘッドランプを置いてきたし、時間もないので、すぐ引き返した。谷道は素晴らしいブナ林が広がり飽きないのだが、長い。
 ようやく小屋に辿りついて、バスの時間に合わせて下った。バス停には列が出来ていた。

<行程>阿倍野―近鉄――大和上市―バス―杉の湯―バス――和佐又口……・和佐又ヒュッテ、和佐又山往復後、《宿泊》・……大普賢岳、・……無双洞……ヒュッテ、以下同行程戻る