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近藤夫妻の1999年9月山旅、写真撮影の旅<緑求めて1>

緑みどり求めて〜 

私の師匠でる写真家楓大介先生の新テ−マ「KeepGreen」の撮影にお役に立てればと、各地を案内し、ナビして回る車の旅記録である。
京都北山 1999.7.20
   

洗練された京都北山風景美を求めて

 京都北山といえば、著名な北山杉が代表する杉植林で象徴される山域であり、これらの村落は古くから、林業を生業としてきた。その杉林は美しく、今なお多くの写真家他、芸術家達の創作意欲をかきたてる対象として、愛され親しまれている。
 古くから都に近接した地域であったので、平安朝の昔から御所の屋根を吹き替えたり、氷を献上したり、木材の貢献などで宮廷や街との交流深く、また貴人が隠棲した地でもある。他の山村とは違って、洗練されているのも当然と言えよう。

 そこに暮らすそんな人々の意識が、1000年にわたって積み重ね、磨かれた気品ある里山風景、山、谷、山里つなぐ峠道、全域に染み透る品格を備えた、繊細な山域である。その伝統が今日まで生かされ続けていることが、奇跡ともいえ、人々に慕われる所以であろう。
 先生のご要望に応えるべく、北山を巡るベストなコ−スを夫から伝授され案内する。写真クラブの同僚Y嬢と三人旅となる。京都市街を北上し、若狭道を走る。ちょうど、比良山系の裏、西側に入る花折トンネルの辺りから、杉の緑濃い山中の雰囲気に、先生喜ばれる。
 比良山系といえば、私ら関西登山家の心の拠所、関西の良きフィ−ルドとして、1、2番に名のあがる山域である。琵琶湖の海からスックリと、壁のように立ちはだかり、空高くそびえる姿は、胸すくものである。四季の変化に富み、バリエ−ションにも事欠かず、多くの登山者を魅きつけて止まない。
 谷沢の多彩なコ−スが楽しめる拠点である坊村の辺り、アウトドアのブ−ムのお陰か、小綺麗に整備された施設やオ−トキャンプで楽しんでいるグル−プが多い。その一つに入って昼食休憩。お金をとられるのは癪だけど、青空の下、安全で綺麗な安曇川の河原は気持ちがよい。整備されない所は、荒れてしまうのよね。

京都北山の核心部へ  

 梅ノ木から、細々とした橋を渡り、北山の山域に入る。谷間の風景に撮影。山間部の細い道を抜け、点在する集落の静かなたたずまい、かやぶきの屋根、各家の庭木、田の畦道に咲く野の花でさえ、すこぶる上品さよ。何気ない田舎の風情して、実はこれほど手入れされた田舎など、滅多にお目にかかれるものではない。
 けれども冬は、しんしんと雪の降り積もり、山登りに来て、除雪もされない道に往生させられた事もある私には、その暮らしぶり優しくないだろうと想像する。道など荒れ果てても仕方ないと思われるのに、集落のない峠道にもきちっりと、草刈り払われ不様な様見せない心意気に、敬服する。
 日本の山は、古くから人が住み、深く関わってきた。里人の手があってこそ、山の恵みを受けることができる。便利な都会に住む私ごときが、偉そうなことを言える筋合いはないが、美しい日本の山里風景を、どうか残してほしい。そして、日本の繊細で優しい自然を愛することを、続けさせてほしい。
 広川原付近の河原で、映像撮影している人達の横で、私達も撮影。佐々里峠を越えて、芦生に着く。京大演習林として、原生林の残された希少な森のある所である。北山の杉植林ばかり有名だが、実は豊かな植生の大木繁る地域なのだ。芦生の原生林を歩くツア−が、ここ最近の流行で出ている。みんな自然を愛しているのよね。
 途中途中の河原にも、釣り人が川に浸って、竿を伸ばしている。その絵になる風景を撮影し、美山町から和知町へ。北山を育む由良川の流れに沿って、いつしか、山開け、本当にのどかな田園風景の広がる丹波の里に出てきた。

<行程>
京都−若狭道、367→梅ノ木−県道→久多→広川原−京都広川原美山線→佐々里→芦生→演習林入り口→美山町→和知町→丹波−京都縦貫自動車道→長岡京