針ノ木雪渓から由緒ある峠へ
夫の夏は忙しい(仕事が)。私は夏山が好き、だからこの時期、好天気を逃せない。彼が既に登った山には行っても良いので、一人で登ってこよう。三百二百名山と効率も良い。
針ノ木峠は、信州と越中を結ぶ峠として戦国時代にも通られているそうだが、とても厳しい自然環境で容易ではなかっただろう。ウェストンの記録でもよく出てくるが、ここから「おいおい何処行くねん」的通り方だ。一度目は善光寺から大町〜針ノ木峠〜黒部川(今ダム)〜ヌクイ谷〜ザラ峠〜立山温泉(廃)〜弥陀ガ原〜立山〜富山〜笠ガ岳〜安房峠〜松本〜徳本峠〜穂高岳〜松本と旅は続く。肝心の針ノ木超えは、嫌がる案内人を率いての険路。特にこの雪渓と黒部への下りは困難を極め、今とは道も大分違う様子。
しかし、槍ガ岳や、八ヶ岳と甲斐駒の間にそびえる富士山の、峠からの眺めは違うまい、素晴らしい展望だ。
針ノ木雪渓は白馬より小さく谷も狭い。峠の到着も、午後過ぎてガスが出たので、登頂は翌朝とする。さすが夏山の最シ−ズン、小屋も野営場も人で賑わっていた。
朝食前、御来光にあわせてまず蓮華岳へ。ここコマクサの大群落にはビックリ!驚くほど株多く立派であった。白いコマクサも有名らしい。すこぶる快晴、夫を真似て見える山々を一通り唱えつつ、「どれが烏帽子?水晶?」と騒ぐおばちゃん達に説明すると、これから縦走していくというから、恐ろしい。この先、崩落地あり険しいので無事を祈るばかりである。
小屋に戻り、朝食をとって、次は針ノ木岳を目指した。展望は朝、見過ぎたので特に期待してなかったのが、浅はかであった。お互い頂は近いのに見え方が違う!
まず槍ガ岳は谷間の高瀬ダムからすっくりと正面に尖り立つ。赤牛岳に隠れていた薬師岳から越中沢岳の広い尾根、緑鮮やかな五色ガ原が眼前に、何より「えっ」ていう位、立山・剱が近く黒部ダムはすぐ真下、賑わう声が聞こえてきそうだ。きらめく日本海から、戸隠など頸城山塊も近く、浅間山や八ヶ岳、富士山、南アルプス、松本盆地…。乗鞍岳、広大な北アルプスの山脈の正に真ん中にいるのが実感できる。
この頂は北アルプスの中で一番好きかもしれない。水晶の頂が一番好きだが…、う〜やはり一日目では立てない困難さで譲れないが、展望で捨て難かった(夫のお勧めはこの横の赤沢岳)。さてまた小屋に戻り、かがむと槍ガ岳が正面に見える槍見の有名なトイレで用を済ませて、昨日の道を下った。
単独で登ると色んな人に会う。「遭難はする方が悪い」と言った私に、「秀才と美人は冷たい」と捨てセリフ残され落ち込んだり、大沢小屋の、客を追い返す(2時頃着いた中高年にまだ時間があるから登れと、6時過ぎに着いた客にはいっぱいだから戻れと、騒ぐおばちゃん集団にはウルサイから出ていけ!と)おやじと、それに追い返されまいと毒舌バトル繰り広げる客らに、気に入られ引き留められたり、湧き水の水場では、残り香から「今、コ−ヒ−飲んでたでしょ?」と中年グル−プに聞いたら、私のために新しく沸かしてたり(美味しかった!)他いろいろ、楽しい人達に出会えた。
<行程>7/31大阪-急行 きたぐに→ 8/1→糸魚川→ 信濃大町=バス→扇沢…歩→針ノ木雪渓…→小屋<泊>
8/2…→蓮華岳、峠…→針ノ木岳…→峠…→雪渓…→扇沢=バス→大町温泉=→信濃大町→松本→名古屋→新大阪