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近藤夫妻の1999年2月山行記録

法師山 1120M −−半作嶺(南紀) 1999.2/21〜22

百間渓谷から法師山へ

 雪に懲りた私たちは南紀へ向かうことにした。
 百間渓谷は、夏にはメジャ−な観光地らしく、入口にあるキャンプ場も予約でいっぱいになるそうだ。昭和30年頃作られたような歩道は苔むして、自然に溶け込み、活かされて、過不足にならない整備のされ方が良い。豪雪で道が崩れるような事なんてないのだろう。  
 木の生えた礫混じりの巨岩、奇岩が所々に転がり、その上を歩いたり潜ったりしながら、美しく清洌な滝や深碧の淵と変化に富んだ光景が続く。森は、椿の花咲く常緑照葉木や大トチノキカエデ等の落葉木の中、杉の植林があり、下生えがもしゃもしゃしている所が南国らしい。礫岩の森は、庚申山(足尾)と似ているが、後者は下が笹で覆われもっと爽やかさがある。が、静寂な中の明るさと音の響きが良い点は同じだ。夏だったらこの美しい沢に入って遊んでみたい。渓谷の上流は時々伏流になり滑床が続く。
 百間山登山口に荷物を置き、軽荷で法師山に向かう。いったん林道に出てしばらく先、脇の細い道を急登する。夏には決してお勧めできない道だ。藪深くなりそうだ
 法師山は、なだらかな二等辺三角形で、山頂に大きな反射板がありよく目立つ。植林を抜けると、ブナ、ミズナラ、ヒメシャラ等に照葉樹の交じった、気持ちの良い明るい森が戻ってくる。頂上の眺めは、ぐるりと紀伊半島を囲む太平洋を180度望み、潮の岬が突き出して見える。裏に返れば、右に昨年登った熊野の主峰大塔山、正面に名高き果無山脈、左に明日縦走する作嶺への尾根、奥には真白い雪を冠った大峰山脈奥高野の山々が、山の向こうに続いている。眺望絶佳とはこの事か。
 百間山へは樹林の中、道標はあるが、右側が切れ落ち、岩場あり、不明瞭な道も幾つかあって注意が必要だ。木々の間から覗く広々とした山波は、さすが「木の国」和歌山と思わずにいられない。太陽と競争しながらたどり着いた百間山からは夕陽にきらめく海も望まれる。
 ここを真っ直ぐ下れば、荷物のデポ地点となり、野営する。杉の枯れ葉を敷き詰めた寝床は柔らかく暖かく心地よい。

百間山から半作嶺へ

 朝、再び百間山に立つと、果無山以北は雪雲に覆われ寒々とした空が続いているが、かたやこちらは青空の小春日和である。大笹に覆われた道を突っ込んでいく。痩せ尾根のうえに昨年の台風による倒木で歩きにくく、急な上り下りが続く。道にはシャクナゲが繁り、花の頃はさぞ美しかろうと思われる。
 三ツ森山本峰は大きな一枚岩で灌木林に覆われ、展望も素晴らしい。私はこの山の頂上が一番好き。一帯が植林の半作峠で重荷を置き、半作嶺を往復する。この頂からは田辺の街や白浜が間近に見下ろせる。
 峠を下るとほどなく立派な林道に出て、昔の道を下ろうとしたが倒木で全く進めくなり、林道を歩いた。眺めは絶景なのだが、林道の脇は今も土砂が崩れ落ち、台風後の倒木達も痛々しい。
 麓の集落から見る半作嶺「乙女の寝姿」と言わる形の通りなのだが、その林道が山腹を横切り、地元の子供が手術の痕みたいと言った通り!である。果無にしろ、玉置山にしろ、登りたいこの辺の山はかなり上まで林道が付けられ、登る意欲が削がれてしまう。   当時の国策とは言え、山奥深くまでも植えられた杉一面の山並にも閉口する。自然のままの森は美しいのに。おかげで今年も季節病に冒されてしまったのであった。

<行程>天王寺ー JR→紀伊田辺=タクシ-→百間口バス停前《野営》…→百間山登山口…板立峠…法師山…百間山…登山口《野営》…百間山…三つ森山…半作嶺…林道…城戸=バス→朝来=バス→白浜温泉=白浜ーJR→天王寺