二百名山の中には、登山道の無い山が幾つかあり、佐武流山もその一つだ。群馬長野新潟に跨がる白砂山には道があり、ここから北にあの苗場山と一応繋がる尾根の真ん中に、佐武流はある。登山は当然、残雪期の今に集中するだろう。
関西からはアプロ−チが悪すぎて、初日は遊ぶことにした。すぐ近くの超有名な草津の湯に浸り、賑わう観光客と広い碧の湯畑(ゆばたけ)に感嘆する。
翌日、花敷の旅館に登山口の野尻湖まで送ってもらった。ここは人造の発電用貯水池なのだが、一面緑の笹が広がり、濃い緑のツガと、肌白いダケカンバが立ち並ぶ、この辺りの風景の特徴そのままで、爽やかで品がよい。夏にはニッコウキスゲや高山植物の宝庫だそうだ。
まだ雪を残しながらも、さすがGW、釣りやオ−トキャンパ−で賑わい、登山客も多い。地蔵峠からは樹林の夏道と雪の冬道を所々交差しながら登っていく。天気は好く、眼下にきらめく湖、樹の合間からは、志賀高原の名峰岩菅山が白く裏岩菅山までの大きな長い横姿を覗かせてくれる。用心深い夫は到る所に赤い布テ−プをつけるので他の登山者に不審がられていた。
辿り着いた堂岩山からは目指す白砂山が大きく、雪のない所の斜面が手前にかっこよく見えた。続く佐武流山、そして平らな苗場山(私のイメ−ジは少し傾いた卓台だ)と志賀高原の山々…。ぼんやりと浅間山、榛名山群、谷川岳らが取り巻いているが、春は霞んでくっきりとは見えず、遠望が利かないのも楽しくないね。
白砂山へは雪が少なく、思ったより長い道程だ。頂だけは、まだ雪に埋もれている。白砂山頂から、しばらく白い平らな斜面で、シラビソが黒く、ポツンポツンと立っている。平らな斜面の端で、数パ−ティ−がテントを張っていた。
私達は天気が下り坂なので、今日のうちに沖ノ西沢ノ頭まで行くことにした。ここからの雪の下りが、コ−ス中で一番愉しかった所だ。やがて、所々雪が少ない尾根上を、左の藪へ潜ったり、這い上がったりしながら進む。道がないとは言え、無雪期記録があるように、歩いている人がいるので、道跡はあるのだが、藪は藪だ!なるべく展望のある上の方で、風の当たらない、平らな雪面にテントを張った。明日ゆく佐武流と岩菅山が、木々の間から覗ける位だが、白砂山はよく見える。
翌日どんよりしつつも、視界は悪くない。がれて少し厄介な赤土居山を越えると、佐武流山は目の前だ。上から苗場山からの縦走組が降りてきた。登り立った頂上は、樹林の中で何もない。苗場が見えたかな。早々にテントに引き上る。
白砂からのピストン組が、どんどんやってくるようだ。テントに戻ると、登頂の安堵と、疲れと、すぐにはお天気崩れなさそうな安心感で、結構、昼寝が長引いた。起き出すと、ガスに覆われて視界が悪い!急いで撤収して、昨日来た道を登り返す。
ガスの中、白砂山付近は、連泊するらしいテントの登山者で賑わっており、すれ違う人達が、私達の関係を「ガイド(夫)と客(私)だ」と囁く、声が漏れ聞こえるのだった。
堂岩山まで長く、元気な家族連れ(タクマシイ子供達!)にも置いていかれ、その先も、雪が大分無くなって、疲れ切った体には、歩き辛く堪えた。前日、夫が付けてきた赤テ−プが役立ち、迷うことなく、雨の降りだす前に下りることが出来た。天候も良くなく、地味で、私は愛着を感じない山であったが、まあ登れて良かった。
川幅全部が温泉の、尻焼温泉で遊ぶ
<行程>4/30大阪―夜行急行きたぐに→
5/1長岡―→越後湯沢―→渋川―→長野原草津口=バス→草津温泉=タクシー→花敷温泉<旅館泊 >
5/2=車送り→野尻湖(9:00)…歩→堂岩山…白砂山…(1600)沖ノ西沢ノ頭<野営>
5/3(530)…赤土居山…佐武流山…沖ノ西沢ノ頭(テント撤収)…白砂山…堂岩山…(1740)ハンノキ沢出会<野営>
5/4(730)…(740)野尻湖=車ヒッチ→花敷温泉…歩10分→尻焼温泉…花敷温泉<旅館泊>
5/5=バス→長野原草津口→万座鹿沢口=バス→軽井沢―信濃電鉄→長野―特急しなの→名古屋―新幹線→新大阪