あけましておめでとうございます。
2000年1月2日、山の作曲家は南アルプス仙丈岳から下山しました。
さて、登山という趣味を日本に本格的に持ちこみ、「飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈」を「日本アルプス」となづけた日本登山界の先導者は英国人宣教師ウォルター・ウェストン(1861−1940)。
例年、上高地では、ウェストン祭など開かれます。・・・・登山の安全を願う神事を穂高神社の神主がやる(なんという宗教的寛容)。ウェストンを穂高神社のご神体である穂高岳に案内したのが、「穂高大明神」の住まう「明神池」の猟師、嘉門次(いまも子孫が山小屋経営)。ウェストンは英国にもどり、「Mountaineering
and Exploration in the Japanese
Alps」という本を1896年に出版。これを読んだ小島烏水らが、ウェストンを訪問、ウェストンのすすめで日本山岳会を設立したというわけで、日本の岳人(ワープロで変換すると楽人しかでない)の神様みたいな人です。この本「日本アルプス 登山と探検」という訳題で日本語訳が続編の「日本アルプス再訪」とともに平凡社から出てますが名著です。
さて、初夢の話。このウェストンを題材としたオペラを作曲する夢。
もちろん主人公のウェストンが歌う部分はずっと英国音楽のスタイル。山以外の場面では、少し英国教会音楽風。登場する山の案内人、村人などなどはほとんど「日本民謡大観」の世界、地元の役人や巡査などは明治唱歌風か、日本の初期登山界の先達は「モダン」な人たち。鉄道は未発達だったので、籠かきの歌、渡し舟や天竜川下りの船頭の歌など旅先のエピソードもいっぱい。
クライマックスは嘉門次が蜂の巣を壊してしまい2人が蜂におそわれて踊る「風神雷神」の踊り。
岩場でおじけずいて退きかえそうとする案内人達の「ここは危ないもう帰ろう」の合唱。
途中で大きな鹿を見つけてガイドの仕事を忘れてすっとんでいく猟師たちの「頂上よりもまず獲物」という重唱も聴き所、松本の旅館の若旦那の「ホテルを建てるぞ」というあてにならない大話の独唱も楽しい歌。村人が外国人の登山によるたたりを恐れて止める中、こっそり手引きする若き美麗なる猟師(ソプラノがやる)なんていうのも登場。 ウェストンが夫人を伴って日本アルプスを再訪し嘉門次に再会する喜びの3重唱も感動的。徳本峠から振りかり振りかえり日本の山と人々に別れをつげるフィナーレは涙なくして見ることができない。もちろん演出、装置は山の自然が舞台なだけに雨風も伴う大掛かりな一大スペクタクル。岩場では観客が思わず座席を掴む最新立体映像も。
2000年1月3日
山の作曲家、近藤浩平