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パソコンで楽譜を書くこと

楽譜の作成にパソコンと記譜ソフトを使うのはごく一般的で、文章を書くのにパソコンとワープロソフトを使うようなものです。
とはいえ、2005年現在、まだパソコンで楽譜を書くということは、どのような作業なのか、何か機械的な音楽に陥らないのかといった質問を人から受けることがまだ多い。
コンピュータで楽譜を書くことに精神的抵抗を感じ、「手書き楽譜」に固執する長老作曲家もいるとの噂も聞くし、導入を躊躇している方もまだいるようだし、毎回の質問にまとめて答えることも兼ねて2005年現在の私の使用状況と感じているメリットを簡単にまとめておきます。

私の場合、MacでFinale2001を使っています。
キーボードで音高を指定して同時にテンキーで音価を決めていく入力方法を採っていますが、規則的な拍子で、単純なリズムが続くときは、一気に続けられるので非常に入力が早いですね。
左手で鍵盤を叩きながら、それに同調させて右手のテンキーの音価が割り当てられたキーを叩くという奇妙な訓練ができました。
ただし、拍子記号が変わったり、連符や、小節線をまたいでタイで結ばないといけないようなリズムが出てくると、そのたびにメニューを開いて操作しなければならないので不規則で複雑な音楽になるほど、手書きとの速度の差は小さくなるように思います。
しかし、移調楽器の作業が実音で入力してあとで操作できたり、同じ音型の繰り返しなどが簡単にカットアンドペーストできたり、同じ旋律が調を変えて再現するところは、ペーストして移調すれば良いし、スコアが出来たらパート譜がたちどころに作成できるのも助かる。
それと、やはりMIDIで曲全体のバランスや流れ、錯綜したポリフォニーの縦の響きの確認など、作曲時の耳の手伝いをしてくれるのも助かります。
ただ、画面に表示できるのが楽譜の1ページほどの部分ですので、離れた箇所を参照する速度は紙には、やはりかなわないですね。大きな編成の場合は、書き終えたページのプリントアウトを横に置いておいて眺められるようにしておいて続きを書いています。

キーボードでMIDIで音を鳴らしながら音符を入力していくので、意外かもしれませんが、紙に鉛筆で書くときに陥る危険のある机上のかっこいい譜面ずらに耽る危険が少なく、より音楽と楽譜とが感覚的に直接的につながり、音の結果のための楽譜に集中できる気がします。
また、大胆な構想・・・鳴らしてみなきゃ判らないような思いつき・・を試してみて予想通りの音がするか確認して実作品に使えるか判断するといったことにも役立ちますね。
とくに一人の奏者で再現できないようなポリリズムのアイデアなど思いついたときに、どのようなアンサンブルでそれを実現するかといった試行錯誤も出来ますね。

なにより、これで書いておくと、演奏者が見やすいのが大きなメリット。

ただとてもピアニスティックなピアノパートを書くときは、ペダルの効果も、共鳴の具合も反映しないので、ピアノを弾いて書きますし、歌曲などもピアノの前で旋律線は磨きますから、いざ楽譜を前から順番に仕上げるという作業に入るまではパソコンに向かわず、ピアノの前で考えてますね。

2005年2月26日


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