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恐怖の想像、もし作曲技法が特許で守られたら。

メーカーが特許侵害で裁判で争ったり、作家がある別の作品を下敷きにしたとのことで告訴されたり、パロディ写真家がパロられた大先生に裁判起こされたり、大切な知的資産の保護も運用する人間次第で様々な問題を引き起こす。日本のメーカーなどアメリカではびくびく。特許が押さえられているために、同じ目的のために別の技術を開発したり・・なかなか大変です。コンビニの「おむすび」など、各メーカーとも開き方が違うのを見ると、なみだぐましい努力ですねえ。さて、もし作曲技法、作曲上のアイデアが「技術」と同様、厳格に、特許で守られたら恐しいと思いませんか。今の著作権法では曲がある程度の小節数以上そっくりだと、盗作と判断されるという前例だったかと思いますが、もし、作曲上のアイデアが知的資産として保護されたらこわいですね。オーケストレーション上のアイデア、特殊奏法、オリジナルな音色、和声進行、楽器編成、リズム形・・・・同工異曲なら告訴の可能性あり。20世紀の作曲家はストラヴィンスキーやメシアンにずいぶん使用料を払わなければならないし、シュトックハウゼンあたりが、現代世界で使われている電子音の音色のアイデアに対して権利を主張できたら・・・12音による作曲法がもし特許で守られていたら・・ブーレーズのセリーは、その特許を使ってつくられた技術ということになって権利が複雑化・・こっそりバビットがアメリカの弁護士使って申請だしてたり・・・もし、古典派やロマン派時代だったら・・・アルベルティ氏がハイドンやモーツアルトから徴収する「アルベルティ・バス」の特許使用料で大もうけしたり、ショパンの作曲料が、フンメルやフィールドのアイデアの2次使用料で消し飛んでしまったり・・「完成品」ではなく「技術」「アイデア」という部分が、もし完全に経済原理で保護されたら、「作曲」も、メーカーの技術開発なみに「権利関係」を意識する大変な仕事に・・・もし、そんな事態になったら、告訴されそうな作曲家=結構、大作曲家に多い大もうけしそうな作曲家=結構、忘れられた作曲家でその技術的アイデアがその後、重宝されて普及した人なぞいるどんな事態が起きるでしょう。「知的資産保護が完璧な音楽界」のおそろしい世界の幻想。

ついでに、引用とパロディについて
実は、私、著作権侵害の判断の境界線がこわくてアイヴスみたいなコラージュを、現代日本の巷の音楽を使ってやる勇気がないんです。
ベリオは「シンフォニア」で引用元に了解を取り付けているそうですが、ベリオの「シンフォニア」のように、引用された側が「シリアスな音楽史」の代表として引用されてまんざら悪い気のしない上品な芸術作品での「敬意」をもったインテリ好みのコラージュならOKでしょうが、引用する相手に対して「毒」と「皮肉」と「批判」をもった引用の場合は、相手に事前了解を取り付けることを義務づけるなんてのは、ちゃんちゃらおかしいでしょう。
マッド天野氏のパロディへの白川氏の攻撃、私は極めて不快で、一神教信者的偏狭を感じさせられてしまいます。

2002年8月25日
近藤浩平

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