2001年12月に佐渡裕氏の兵庫県芸術文化協会「芸術監督」就任の発表、兵庫県芸術文化センターの概要、さらに今まで、何度か話題になりながら具体化しなかった県営交響楽団構想がリリースされたので、兵庫県在住の私はとても楽しみにしている。
芸術文化センターの予定地も、西宮北口駅前ということで、私にとってはとても近所だ。
2001年12月20日の発表内容抜粋
(財)兵庫県芸術文化協会「芸術監督(音楽)」に佐渡裕氏(指揮者)が就任することになった。
趣旨
(1)平成14年着工予定の「兵庫県立芸術文化センター」(仮称)の平成17年度開館をめざし、これまで山崎正和芸術監督(演劇)の指導のもと、演劇、音楽、バレエ、アジア・太平洋芸術など多彩な舞台芸術に係るソフト先行事業を展開してきた。
(2)同センターの開館が具体化しつつあるこの時期に、新たに音楽担当の芸術監督を迎え、ソフト先行事業の一層の充実をはかるとともに、施設活用面についての助言 県営交響楽団構想への指導・助言等を得ることとした。
(3)新たな芸術監督(音楽)は、佐渡裕氏にお願いする。
職務内容
就任予定日 平成14年4月1日
任期3年(更新あり)
1.芸術文化センター・ソフト先行事業(音楽分野)の指導・助言・オリジナル音楽公演 インビテーショナルほか
2.芸術文化センター公演計画及び同施設の活用面についての指導・助言
・開館記念事業及び通常公演計画(音楽分野)
・音楽関連スペースの活用
3.県営交響楽団構想への助言・指導
芸術文化センター(仮称)の推進について
1.基本理念:
芸術文化センターは広域公共劇場として、芸術文化の普遍化、生活の芸術化に向け自ら創造し、県民とともに創造する「パブリックシアター」をめざす。
・阪神・淡路大震災からの心の復興・文化の復興に貢献する。
・芸術文化の鑑賞・創作・発表など多彩な文化創造活動を通じて、広く県民文化の創造を図る。
・21世紀における舞台芸術の創造と交流を国内外にわたり推進する。
・芸術文化を通じて地域の振興を図る・
2.施設概要
(1)建築場所:西宮市高松町(阪急西宮北口駅南)
(2)施設内容:
大ホール 約2000人収容 音楽を中心にオペラ・バレエ・ミュージカル
中ホール 約800人収容 演劇、ミュージカル、伝統芸能
小ホール 約400人収容 室内楽中心
非上演部門 リハーサル室、練習室、楽屋、楽団スペース等
(3)敷地面積:約15,000u
(4)延床面積:約30,000u
(5)鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
(6)施設整備費 約200億円
(7)スケジュール 着工予定時期平成14年度 開館予定時期 平成17年度
事業展開の概要
(1)「ひょうご舞台芸術」、「ひょうごインビテーショナル」などのソフト先行事業やふれあいの祭典・文化イベント、ピッコロシアターの活動など先行の事業の実績も踏まえ、「パブリックシアター」として優れた舞台芸術を廉価に提供していくことを主眼に、簡素で効率的な運営を行う。
(2)そのために「パブリックシアター」として不可欠な、
・創造理念を持った芸術監督をはじめとする芸術経営のプロフェッショナル
・その理念を体現する専属の芸術創造団体(県営交響楽団・ピッコロ劇団)
・活動の拠点となる、高度で専門的な機能を有する劇場
の3つの要素を駆使して、音楽・演劇・舞踊等の様々な分野を対象に、親近感に富む事業から芸術性豊かな事業まで多彩な事業を県民に提供していく。
(3)事業の枠組みと具体的な事業例としては、
・創造・公演事業〜劇場本来の事業として県民に優れた舞台芸術を鑑賞する機会を提供するとともに、国内外に情報発信する。
事業例:ひょうご舞台芸術、県営交響楽団の定期・特別公演、ピッコロ劇団プロデュース公演 など
・芸術文化普及事業〜「パブリックシアター」ならではの事業として県下全域に舞台芸術を広め、子供から大人まで幅広い県民と舞台芸術の新しい出会い、交流を生み出す。
事業例:鑑賞セミナー、アウトリーチ活動など
・芸術文化創造基盤整備事業〜人材育成など、中長期的な視点に立って舞台芸術の創造・普及の基盤づくりに取り組む。
事業例:舞台技術学校、県営交響楽団員による演奏指導 など
の3つの枠組みで考えており、芸術文化センター内での事業展開はもとより、県内外の各ホールとのネットワークを生かし、センターで制作した作品の各ホールへの提供(巡回公演)、各ホールとの共同企画・制作などによる公演を行い県民文化のすそ野を広げるとともに、その質を高めていく。
(4)県営交響楽団の基本的な考え方としては、芸術的責任と権限を有する「音楽監督」のもと、主要演奏家のみを常勤とし、その他の者は別途登録されたメンバーの中から演奏曲目に応じて選抜して、オーケストラを編成し、演奏活動を展開するとともに、アウトリーチ活動などの芸術文化普及活動にも積極的に取り組み、すべての県民に開かれた音楽創造集団をめざしていく。
(5)運営にあたっては、各種事業収入を最大限に確保するなど経営努力を行うとともに、基金の活用など安定的な財源の確保に努めるなどして、収支の均衡を図っていく。併せて運営への県民の参画についても配慮していく。
平成14年度 芸術文化センターソフト先行事業計画
「佐渡裕 企画・指揮」
ひょうごオリジナル音楽公演 佐渡裕のヤング・ピープルズ・コンサート「マーチの不思議」
指揮・お話:佐渡裕
ゲスト:原朋直(ジャズ・トランペッター)
演奏:シエナ・ウインド・オーケストラ
公演 7月12〜17日 県内5箇所
特別事業:佐渡氏による西宮市内の中高吹奏楽部等の指導
全体事業
1.ひょうご舞台芸術(2作品)
2.ひょうごオリジナル音楽公演 佐渡裕のヤングピープルズコンサート
3.ひょうごインビテーショナル(バレエ分野および音楽分野)
4.アジア太平洋芸術公演
5.舞台芸術シンポジウム
6.舞台芸術鑑賞セミナー
7.阪神文化ネットワーク事業
8.調査研究事業
9.舞台芸術情報誌発行
地元作曲家の立場として私は、県営オーケストラには、とくに20世紀、現代のレパートリーを、できるだけ多くの人に親しみやすく聴いてもらって、聴衆層を広げるといったこと、また、現代の作曲家の表現の場として手が届くところにあること、また作曲と演奏がとても近いところでコラボレーション出来る場などを期待しています。
こういう路線はザ・シンフォニーホールなどのブランド指向の営利事業にはあまり期待できないですし、ちょうど兵庫県のピッコロシアターが演劇を創ることを中心においているように、音楽を創ることが中心になった芸術センターというものがあって欲しいところだ。いずみホールも現代音楽のシリーズをやっていますが、特定の作曲家の指向を強く出す路線であり曲目は前衛(古いか?)指向が強いので、また、違った方向の対抗勢力が関西に欲しいところです。
アジア・太平洋地域の音楽作品を積極的に取り上げることも期待したいところです。
県立の美術館ならば、当然、同時代のアーティストの作品の発表の場にもなっていて、県展や様々なグループが日常的に作品発表をしたりするように、芸術センターには、例えば地元の作曲家に、県営オーケストラや、地元アマチュアオーケストラや地元演奏家のためのレパートリーを、どんどん書かせてお互いが試演・本番と経験をつむ場をつくるなど、思いきった試みをして欲しいものです。
古典の演奏行為を兵庫県で行うということだけでも、演奏者にとっては十分な創造的活動ではあるでしょうが、やはり、音楽が生まれるところ、新しい曲、同時代の表現をもった作品がレパートリーに欠けているということは、他の分野では考えられない奇特な状態です。
県立の美術館が同時代や地元作家の作品発表に開かれていなかったり、収蔵作品がヨーロッパの名画のみで20世紀の日本や地元作家の作品が無ければおかしいと指摘されるでしょう。県営交響楽団や文化芸術センターにも同様のことを求めたいと考えます。
新作をやったりすると写譜や著作権料など費用がかかり、観客動員も短期的には、有名名曲をやった時より減ってしまうことは否めないかもしれないが、施設整備費で建設会社に払う200億円のハード費にくらべたら大したこと
ないですよね。クラシック音楽を狭い固定イメージに閉じ込めて参加者層が狭くならないように広報戦略も必要でしょう。
オーケストラというものの今後の有り方への展望についてはこんな文章も書いたことがあります。
参照
2002年1月6日
近藤浩平記