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演奏家への手紙6

外から見たクラシック音楽

 クラシック音楽に普段から接している人以外にとっては、往々、クラシック音楽は停滞した閉ざされた世界に見えます。
 クラシック音楽を外から見ると、過去の評価の定まった名曲を楽譜に忠実に演奏し、繰り返し鑑賞するばかりの分野に見えます。クラシック音楽に詳しい人以外は、所謂クラシック音楽を、ベートーヴェンやチャイコフスキーやモーツアルトの演奏の継承の場とだけ見ているのが現状で、シリアスな同時代の表現活動がそこにあるとは認識していません。近現代に非常に多くの作品があり、多くの同時代の作曲家がいるなどとはおよそ認識していません。(ある民放のクイズ番組で、武満徹を知っていたゲスト解答者は、ただ一人でした。)
 当然、同時代的な共感を得ようとする人、今日に生きる人間としての表現活動を志向する人は、クラシック音楽の入り口には立ちません。例えば、非常に創造的音楽性と野心にあふれた子供がいた場合、彼はクラシック以外の音楽を活動の場として選択することになるでしょう。
 また、好奇心の強い、新鮮な驚き、出会いを音楽に求める聴衆、同時代的共感や今日的問題意識を音楽に期待する聴衆も、他のジャンルに流れます。
 結果としてクラシック音楽のコンサート会場は、いろいろな音楽ジャンルのうちでも最も後ろ向きの保守的な人達が集まる場になってしまい、新しい音楽の創造の場としては最もふさわしくない場になったといえるかも知れません。
(1999年8月)

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