オーケストラの将来 P4

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1..はじめに
2.クラシック音楽の現状
3.聴衆の拡大とレパートリー、情報戦略
4.クラシックファンの保守的な耳
5.同時代のメディアとしてのオーケストラ

6.社会性、文化的重要性

4.クラシックファンの保守的な耳

最も保守的な聴衆、クラシック音楽ファン

いろいろな音楽の分野のなかで、残念ながら、最も保守的な聴衆を支持層としているのはクラシック音楽でしょう。この聴衆は、もしかしたら、同時代の音楽を聴いてもらうには、最も良くない相手かもしれません。
私の経験では、近年のアメリカなどの現代作品(たとえば、ルー・ハリソンあたり)、あるいは欧米以外の世界の優れた民俗音楽などを試しに聴いてもらって最も抵抗を示すのは、モーツアルトなどヴィーン古典派音楽だけで純粋培養されたようなクラシックファンとピアニスト、ヴァイオリニストのようです。
一方、プログレッシブ・ロックやジャズやワールドミュージックなどを好んで聴きながら、映画や演劇や他の芸術などに関わっていて知的好奇心も強いという人は、音楽受容の許容範囲が広いようです。
西洋の18−19世紀のクラシック音楽は、「長短調の調性」「機能和声」「単純な周期的拍節」「雑音の排除」という点で非常に特殊な音楽であり、とくに機能和声や導音といった、文化的慣習によって条件づけられた聴取習慣を前提とした音楽なので、他の構造を持った音楽を、受け入れ難い人間を作ってしまう面があるようです。(逆の面もあるが)
とくに、微分音を含んだ音楽、西洋と異なった音階、音律の音楽、耳を傾けるべきポイントの異なる音楽、西洋的拍節をはなれたリズムといったものは、西洋のクラシック音楽で理屈にあわない音は排除する音楽教育を受けた耳には、受け入れがたい「はずれた音」なのでしょうか。とすれば不幸なことです。

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