『エグドン・ヒース』と『惑星』に共通した構造について、ここで表4、表5にまとめてみることにする。
全体は「宇宙」あるいは「自然」という絶対的存在を象徴する要素、「人間」を示す要素、両者を仲介し最終的融合・合一・一致へと導く「呪文」と「ダンス」から成り立っている。表5にも示した通り、「宇宙」「自然」を象徴する部分は、反復されるパターンや非機能和声的和音反復、無調的あるいは特殊な旋法の素材によって形成される音響であり、「人間」を示す全音階的旋律と著しい対照をなしている。音楽は表4に示す通り、2つの要素の対立・対峙から調和、平和を示す部分へ進み、「呪文あるいは喚起とも言うべきもの」が出現して「ダンス」を呼び起こし、対立要素の融合、あるいは「宇宙」「自然」と「人間」との合一へと達する。(注86)
この過程のどの部分が、具体的に音楽のどの部分であるのか、各要素はどのような特質をもった音なのか、融合はどのような方法で達せられるのかといった細部については、表4、表5と全曲とを併せて見ていただきたい。
さて、以上、対象を『エグドン・ヒース』と『惑星』という2つの作品に限って述べてきたが、ホルストの他の作品に共通性が見出せるのだろうか。